日本で働いていると、
年末になると「年末調整(ねんまつちょうせい)」という言葉を聞いたり、
「確定申告(かくていしんこく)」という手続きの案内を見たりすることがあります。
しかし、
「自分はどちらが必要なのか」「何をすればいいのか」が分かりにくい、
という在留外国人の方も多いです。
このページでは、
年末調整と確定申告の違いを、在留外国人向けにやさしい日本語で整理します。
細かい税法の話ではなく、まずは仕組みと役割をざっくり理解することを目的としています。
1. 年末調整と確定申告は「1年分の税金の答え合わせ」
4-5-2の記事でも説明したように、
給料からは毎月所得税が「源泉徴収(げんせんちょうしゅう)」という形で前払いされています。
しかし、
年間を通してみると、
- 前払いした所得税が多すぎる(払いすぎ)
- 前払いした所得税が少なすぎる(払い足りない)
ということが起こります。
この「払いすぎ・払い足りない」を調整して、
本来の税金の額に近づける手続きが、
- 会社を通じて行う → 年末調整
- 自分で税務署に申告する → 確定申告
というイメージです。
2. 年末調整とは:会社員のための「まとめの調整」
2-1. 年末調整の役割
年末調整は、
主に給与で働いている人(会社員・一部のアルバイトなど)のために、
会社がまとめて税金の調整を行う仕組みです。
会社が、あなたに代わって、
- 1年間の給与の合計
- 保険料控除や扶養の有無など
をもとに、
「本来払うべき所得税の額」を計算し直します。
その結果、
- 払いすぎていた → 差額が還付(返金)される
- 払い足りなかった → 差額が追加で徴収される
という形で調整されます。
2-2. 年末調整の対象になりやすい人
一般的には、次のような人が年末調整の対象になることが多いです。
- 1つの会社で、給与をもらっている人
- 会社が「年末調整を行います」と案内している人
年末近くになると、
会社から「年末調整の書類を提出してください」などの案内があるケースが多いです。
年末調整に必要な書類(保険料の証明書など)は、
なくさないように保管しておきましょう。
3. 確定申告とは:自分で税務署に申告する手続き
3-1. 確定申告の役割
確定申告は、
自分で1年間の所得や税金の計算を行い、
税務署に申告する手続きです。
「自分で年末調整のような作業をする」と考えるとイメージしやすいかもしれません。
3-2. 確定申告が必要になる主なケース(一般的な例)
一般的に、次のような人は確定申告が必要になることがあります。
- 2つ以上の会社から給与をもらっている人(ダブルワークなど)
- 会社員だが、副業の収入などが一定額を超える人
- フリーランス・自営業など、自分で仕事をしている人
- 年の途中で退職し、その後に年末調整を受けていない人
また、
条件によっては、
確定申告をすることで税金が戻ってくる(還付される)場合もあります。
実際に必要かどうかは、
その年の収入や働き方によって変わるため、
不安がある場合は、税務署や専門窓口に確認することが大切です。
4. 年末調整と確定申告の大きな違い
年末調整と確定申告の違いを、シンプルに整理してみます。
- 誰が手続きをする?
・年末調整:会社がまとめて行う
・確定申告:自分で税務署に申告する - どんな人が対象?
・年末調整:主に1つの会社で働く給与所得者
・確定申告:自営業・フリーランス・複数の収入源がある人など - 目的は?
・共通:1年間の所得税の「答え合わせ」をして、払いすぎ・払い足りないを調整すること
年末調整を受けた人でも、
条件によっては追加で確定申告が必要になるケースもあります。
(例:副業収入が一定額を超える場合など)
5. 在留外国人が気をつけたいポイント
5-1. 日本語の書類が分からないときは一人で抱え込まない
年末調整や確定申告に関する書類や案内は、
多くの場合、日本語で書かれています。
日本人でも難しい内容なので、
一人で無理に読もうとしてストレスをためる必要はありません。
- 会社の担当者(人事・総務など)
- 学校の事務・留学生支援担当
- 自治体の外国人相談窓口
など、信頼できる窓口に相談しながら進めるのがおすすめです。
5-2. 「何もしなくていい」と思い込まない
会社員として働いていて、
年末調整でほとんどの調整が完了する場合もありますが、
- 副業やアルバイト収入がある
- 年の途中で退職して、その後は無職だった
など、状況によっては、自分で確定申告をしたほうがよいケースもあります。
毎年の状況が変わる場合は、
その都度確認することが大切です。
6. よくある質問(Q&A)
Q1. 会社から「年末調整をします」と言われました。自分で確定申告は不要ですか?
1つの会社からの給与だけで、
他に大きな収入がなければ、
多くの場合は年末調整だけで足りるケースが多いと言われます。
ただし、
副業収入や不動産収入などがある場合は、
別に確定申告が必要になることもあります。
不安な場合は、会社の担当者や税務署に確認するのが確実です。
Q2. アルバイトを掛け持ちしています。年末調整はどうなりますか?
複数の会社から給与をもらっている場合、
どこを「主な勤め先」とするかによって取扱いが変わることがあります。
年末調整をしてくれる会社があっても、
もう一方の収入については、
確定申告が必要になることもあります。
自分のケースについては、必ず会社や税務署で確認してください。
Q3. 自分が確定申告をしないといけないか、どうやって判断すればいいですか?
条件は少し複雑で、収入額・収入の種類・在留資格などによって変わります。
一般的な目安だけで判断せず、
税務署・専門窓口・信頼できるアドバイザーなどに相談して確認することをおすすめします。
Q4. 日本語があまり得意ではありません。確定申告はとても難しそうです。
確定申告は、日本人にとっても分かりにくい手続きです。
一人で抱え込まずに、
多言語対応の相談窓口や、
周りの日本語が得意な人のサポートを受けながら進める方法もあります。
まずは、自分が本当に申告が必要かどうかを確認するところから始めてみてください。
7. まとめ:自分でやるか、会社がやるかの違いを理解する
- 年末調整と確定申告は、どちらも「1年分の所得税の答え合わせ」をするための仕組みです。
- 年末調整は主に会社員向けで、会社があなたに代わって手続きをしてくれます。
- 確定申告は、自分で税務署に申告する手続きで、自営業・フリーランス・副業がある人などが対象になることが多いです。
- 在留外国人の場合、在留資格や働き方によって必要な手続きが変わるため、「自分のケース」で確認することが大切です。
- 日本語の書類が難しいときは、一人で悩まず、会社・学校・自治体・専門窓口などに相談しながら進めていきましょう。
このページで、年末調整と確定申告の「役割の違い」が少しでもイメージできたら、
次のステップとして、自分の働き方や収入の状況をふり返り、
必要に応じて専門の窓口に相談してみてください。


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