日本の病院で診察を受けるとき、
「日本語でうまく説明できるかな」「医師の話が分かるかな」
と緊張する在留外国人の方は少なくありません。
このページでは、
診察室でのコミュニケーションのコツを、
在留外国人向けにやさしい日本語でまとめます。
完璧な日本語を話すことが目的ではなく、
「必要な情報が伝わること」「納得して診察を終えられること」を目標にしています。
1. 診察室に入る前に準備しておくとよいこと
診察室であわてないように、
待合室にいるあいだに次のような準備をしておくと安心です。
1-1. 症状のポイントを3つにしぼる
すべてを完璧に説明しようとすると、
日本人でもうまく話せなくなってしまいます。
まずは、次の3つを中心にまとめてみましょう。
- いつから:症状が出たタイミング(例:3日前から)
- どこが:痛い・つらい場所(例:頭・のど・お腹・胸など)
- どのように:どんな症状か(例:ズキズキ痛い、重い感じ、かゆい など)
紙やスマートフォンのメモに、
簡単な日本語や英単語で書いておくだけでも、
診察室で落ち着いて話しやすくなります。
1-2. 医師に聞きたいことを事前にメモする
診察中は緊張して、聞きたいことを忘れてしまうことがあります。
事前に、次のような項目をメモしておくと安心です。
- 「これは何の病気の可能性がありますか?」
- 「検査は必要ですか?」
- 「ふだんの生活で気をつけることはありますか?」
- 「いつまた来たらいいですか?」
すべてを聞けなくても構いません。
自分にとって一番大事な質問を優先して聞けるようにしておきましょう。
2. 診察室に入ったときの第一声
診察室に入るとき、
最初に一言だけ自分の状況を伝えておくと、医師も状況をイメージしやすくなります。
- 「○○です。今日は、△△がつらくて来ました。」
例:
「タンさんです。今日は、3日前からのどが痛くて来ました。」
この一言があるだけで、診察の始まりがスムーズになります。
3. よく聞かれる質問と、答え方のイメージ
日本語が第二言語の場合でも、
よく聞かれる質問を知っておくだけで、心の準備がしやすくなります。
3-1. いつから・どのくらい
- 「いつからですか?」 → 「○日前からです。」「昨日からです。」
- 「どのくらい続いていますか?」 → 「1週間くらいです。」
3-2. どこが・どんなふうに
- 「どこが痛いですか?」 → 「ここです。」(指で場所を指しながら)
- 「どんな痛みですか?」 → 「ズキズキ痛いです。」「重い感じです。」
3-3. ほかの症状・生活への影響
- 「熱はありますか?」 → 「はい、○度くらいです。」または「いいえ、ありません。」
- 「食事はとれていますか?」 → 「少しだけ食べられます。」「ほとんど食べられません。」
- 「眠れていますか?」 → 「よく眠れません。」など
完璧な文法でなくても問題ありません。
「はい/いいえ」+短い説明の形で答えられるようにしておけば十分です。
4. 分からないときの「聞き返し方」
医師の説明が分からないとき、
そのまま「分かったふり」をしてしまうと、
家に帰ってから不安になります。
分からなかったときに使える、シンプルなフレーズを用意しておきましょう。
4-1. もう一度ゆっくりお願いしたいとき
- 「すみません、もう一度ゆっくり話してもらえますか。」
- 「少し難しいです。もう一度お願いします。」
4-2. 別の言い方で説明してほしいとき
- 「簡単な言葉で説明してもらえますか。」
- 「ここがよく分かりません。」
4-3. メモや紙に書いてほしいとき
- 「紙に書いてもらえますか。」
- 「薬の飲み方をここに書いてください。」
こうしたフレーズを1つでも覚えておくと、
「分からないまま診察が終わってしまう」という不安を減らせます。
5. 通訳・翻訳アプリを使うときのポイント
5-1. 人による通訳を頼む場合
日本語が話せる友人・家族・学校のスタッフ・会社の同僚などに、
診察に付き添ってもらうこともできます。
ただし、プライバシーの問題もあるため、
「どこまで話してもらうか」は自分で決めておくことが大切です。
付き添いの人がいる場合でも、
自分の口から少しだけでも気持ちや症状を伝えてみると、
医師との信頼関係が作りやすくなります。
5-2. 翻訳アプリを使う場合
翻訳アプリは便利ですが、
医療用語や細かいニュアンスはうまく訳せないこともあります。
そのため、
- 長い文章ではなく、短い文を入力する
- 一番大事な情報(いつから・どこが・どのように)を優先する
といった工夫をすると、誤解が少なくなります。
また、
医師が説明した内容をその場で翻訳するよりも、
「あとで自分で見返す用」にメモを翻訳する使い方のほうが安全な場合もあります。
6. 「言いにくいこと」をどう伝えるか
症状によっては、
下痢・便・性に関すること・メンタルのつらさなど、
人に話しにくい内容もあります。
しかし、
医師はこうした話を日常的に聞いているため、
恥ずかしさを感じる必要はありません。
言いにくい場合は、
- 紙に書いて渡す
- 翻訳アプリに入力して画面を見せる
という方法もあります。
大事なのは、医師が正しい判断をできるだけの情報を得られることです。
7. 診察の終わりに確認しておきたいこと
診察が終わりそうになったら、
次のような点を確認しておくと安心です。
- 病名または疑われる状態
- 薬の目的(痛みを減らす薬、熱を下げる薬 など)
- 薬の飲み方(1日何回・いつまで)
- 日常生活で気をつけること(食事・運動・仕事・学校など)
- どのような状態になったら、もう一度受診したほうがよいか
分からないときは、短くでも大丈夫なので、
- 「薬は何のための薬ですか。」
- 「いつまた来ればいいですか。」
と聞いてみましょう。
8. よくある質問(Q&A)
Q1. 日本語がうまく話せなくて、医師に迷惑をかけてしまうのではと心配です。
日本の医療現場では、日本語が母語でない患者さんを診察することも珍しくありません。
医師やスタッフは、ゆっくり話す・簡単な言葉を使うなど、できる範囲で工夫してくれます。
「日本語があまり得意ではありません」と伝えることは、迷惑ではなく、むしろ大切な情報です。
Q2. 医師の説明が一度で理解できません。何度も聞き返しても大丈夫ですか?
はい、大丈夫です。
自分の病気や治療について理解することは、とても重要な権利です。
分からないままにしてしまうほうが、あとで不安やトラブルにつながりやすくなります。
「もう一度お願いします」と伝えることを遠慮しなくて大丈夫です。
Q3. 診察室で泣いてしまいそうです。それでも大丈夫でしょうか。
体調が悪いときや、不安が大きいときに、涙が出てしまうのは自然な反応です。
医師やスタッフは、そうした場面に慣れています。
言葉が出てこないときは、「不安です」「こわいです」と短く伝えるだけでも、
医師が寄り添いやすくなります。
Q4. 診察後に、やっぱり聞きたいことを思い出しました。
よくあることです。
次回の診察のときに質問してもよいですし、
病院によっては、電話で相談できる場合もあります。
思い出したことはメモしておき、次の機会に確認しましょう。
9. まとめ:完璧な日本語より「伝えたいことを絞る」
- 診察室でのコミュニケーションでは、「いつから・どこが・どのように」を中心に症状を伝えると、医師が状況を把握しやすくなります。
- よく聞かれる質問を知っておくと、答え方のイメージができて緊張が軽くなります。
- 分からないことは「もう一度ゆっくりお願いします」「紙に書いてください」と素直に聞き返して大丈夫です。
- 通訳や翻訳アプリは、短い文で、重要な情報を絞って使うと効果的です。
- 大切なのは、完璧な日本語ではなく、「医師と一緒に自分の体のことを考えていく姿勢」です。
このページで紹介したフレーズや準備の方法を、
ぜひ自分なりにメモにまとめてみてください。
小さな準備の積み重ねが、診察室での不安を大きく減らしてくれます。


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