日本で働いている在留外国人の方から、
「日本語がうまく話せなくて不安」「聞き取れなかったとき、どうしたらいいか分からない」
という声をよく聞きます。
このページでは、
日本語に自信がないときでもできる、職場でのコミュニケーションの工夫を、
やさしい日本語で整理します。
目標は「完璧な日本語」ではなく、
必要なことがきちんと伝わること・一人で抱え込まないことです。
1. 「完璧な日本語」を目指さなくてよい
まず最初に伝えたいのは、
職場で必要なのは完璧な日本語ではなく、
「仕事に必要なことが伝わる日本語」だということです。
1-1. 日本語が母語の人でも、ミスはする
- 説明がうまく伝わらないこと
- 言い間違い・聞き間違い
- メールの誤字・脱字
こうしたことは、日本人同士でも起きています。
大切なのは、
ミスをゼロにすることではなく、ミスに気づいたときにどう対応するかです。
1-2. 「伝わればOK」という気持ちも大切
「文法が正しいか」「発音が変ではないか」と心配しすぎると、
何も話せなくなってしまいます。
まずは、
- ゆっくり話す
- 短い文で話す
- 分からないところは紙や画面に書く
という基本を意識して、
「伝えること」を優先してみましょう。
2. 職場で使いやすい「シンプル日本語」のパターン
難しい敬語よりも、
シンプルで丁寧な日本語を覚えておくと、安心して話しやすくなります。
2-1. 基本のクッションフレーズ
最初と最後に、次のような一言をそえると丁寧な印象になります。
- 「お疲れさまです。◯◯です。」
- 「すみません、少しよろしいでしょうか。」
- 「ありがとうございます。」
- 「よろしくお願いいたします。」
これだけでも、会話やメールがぐっと「職場らしい」印象になります。
2-2. 分からなかったときの定番フレーズ
聞き取れなかったときに使える表現です。
- 「すみません、もう一度お願いできますか。」
- 「すみません、少しゆっくり話していただけますか。」
- 「◯◯という意味ですか?(自分の理解を確認する)」
「分かりませんでした」とだけ言うよりも、
「こう聞こえましたが、合っていますか?」と確認するほうが、
相手も説明しやすくなります。
2-3. 自分の日本語に不安があるときの一言
- 「日本語がまだ勉強中なので、ゆっくり話してもよいですか。」
- 「うまく説明できないかもしれませんが、話してみます。」
最初にこう伝えておくと、
相手もスピードや言い方に気をつけてくれることが多いです。
3. 聞き取れないとき・理解が不安なときの対処法
日本語で一番つらいのは、
聞き取れなかったのに、聞き返せずにそのままにしてしまうことです。
3-1. 「聞き返すこと」は悪いことではない
職場のコミュニケーションで危険なのは、
「分かったふり」をしてしまうことです。
聞き返すことは、むしろ責任感のある行動と考えることもできます。
3-2. 段階を分けた聞き返しのコツ
-
素直に聞き返す:
「すみません、よく聞き取れませんでした。もう一度お願いできますか。」 -
キーワードを確認する:
「◯◯を△△までにやる、という意味ですか。」 -
自分の言葉で復唱する:
「確認させてください。◯◯を、まずAをして、そのあとBをする、という流れで合っていますか。」
この「復唱(ふくしょう)」は、
相手の言った内容を自分の言葉で言い直す方法で、
相互の理解をそろえるのにとても役立ちます。
4. メモ・チャット・資料を味方にする
口頭だけのコミュニケーションは、
日本語が母語でない人にとって、とても負担が大きいです。
そこで、メモやチャット・資料を上手に使うことがポイントになります。
4-1. まずはメモを取る習慣をつける
- 上司の指示を聞きながら、キーワードだけメモする
- あとで自分の言葉で整理し直す
- 不安なところは、メモを見せながら確認する
例:
- 「メモを取りたいので、少しゆっくりお願いできますか。」
と一言伝えれば、
多くの人はスピードを落として話してくれます。
4-2. チャットやメールで、文章でも確認する
口頭で説明を受けたあと、
簡単にチャットやメールで確認するのも良い方法です。
例:
-
「先ほどの件、確認させてください。
・◯◯のデータをまとめる
・期限は◯月◯日
・提出先は△△さん
で合っていますか。」
文章にすることで、自分の理解も整理され、
相手もチェックしやすくなります。
5. 間違えたとき・うまく伝わらなかったときの対応
日本語で話していると、
どうしても間違いは避けられません。
大事なのは「間違えないこと」ではなく、「間違えたあとの対応」です。
5-1. シンプルに謝って、言い直す
- 「すみません、言い間違えました。◯◯ではなく、△△です。」
- 「さっきの説明が分かりにくかったかもしれません。もう一度整理して話します。」
一度ミスをしたからといって、
信頼がすべてなくなるわけではありません。
落ち着いて言い直す姿勢のほうが、むしろ好印象になることもあります。
5-2. 自分を責めすぎない
「日本語が下手だからダメだ」と自分を責めすぎると、
ますます話すのが怖くなってしまいます。
ミスをしたら、
- 「次に同じミスをしないために、何ができるか」
だけに集中して、
自分を必要以上に否定しないようにしましょう。
6. 周りの人に「助けをお願いする」こともスキルの一つ
日本語が不安なとき、
一人で全部を完璧にこなそうとする必要はありません。
6-1. 同僚や先輩に協力を頼む
- 「この日本語が自然かどうか、見ていただけますか。」
- 「このメールの文章を、一度チェックしていただけると助かります。」
毎回ではなく、
大事な場面だけお願いするようにすると、
相手の負担も少なくなります。
6-2. 日本語が得意な同僚に「ペア」になってもらう
場合によっては、
会議やお客様対応のときに、
日本語が得意な同僚に近くにいてもらうという方法もあります。
そのかわり、
自分が得意な分野(英語・母語・IT スキルなど)で、
相手をサポートできることがあれば、
お互いに助け合う関係を作ることができます。
7. よくある不安・よくある質問(Q&A)
Q1. 聞き返してばかりで、迷惑だと思われないか心配です。
何度も同じことを聞いてしまうのは避けたいですが、
「分かったふりをして大きなミスをする」ほうが、職場にとっては問題になります。
メモを取りながら聞き返す、
復唱して確認するなどの工夫をすれば、
むしろ丁寧に仕事をしていると評価されることもあります。
Q2. 日本語がうまく話せないことで、評価が下がってしまいませんか?
職場によって考え方は違いますが、
「日本語力」だけで人を評価する会社ばかりではありません。
仕事の正確さ・責任感・チームワーク・専門スキルなど、
いろいろな面が評価の対象になります。
日本語は「少しずつ伸ばしていくもの」と考えて大丈夫です。
Q3. ミスをしたとき、日本語のせいにしてしまいそうです。
日本語の難しさが原因になることも、もちろんあります。
ただし、「日本語のせい」にするだけだと、
自分でも成長のポイントが見えにくくなってしまいます。
「日本語のこの表現を覚えておけば良かった」「次からはメモを取ろう」など、
次につながる学びに変えていくことが大切です。
Q4. 周りの日本人が早口で、ついていけません。
その場合は、
「早口で聞き取りにくい」と伝えることも必要です。
例:
「すみません、日本語がまだむずかしくて、ゆっくり話していただけると助かります。」
と一言伝えることで、
スピードを意識してくれる人も多いです。
8. まとめ:日本語の完璧さより「伝えようとする姿勢」が大切
- 職場で必要なのは「完璧な日本語」ではなく、「仕事に必要なことが伝わる日本語」です。
- シンプルで丁寧な表現や、聞き返しのフレーズをいくつか覚えておくと安心して話せます。
- 聞き取れないときは、分かったふりをせず、メモや復唱を使って確認することが大切です。
- メモ・チャット・資料を味方にし、口頭だけに頼らないコミュニケーションを意識しましょう。
- 間違えたときの対応や、周りに助けをお願いすることも、職場での大事なスキルの一つです。
このページで紹介した工夫の中から、
「これなら今の自分でもできそう」と思うものを、
まず一つだけ選んで試してみてください。
少しずつ経験を重ねていくことで、
日本語への不安も、ゆっくりと小さくなっていきます。


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