日本で暮らしていると、
「国民健康保険（国保）」「社会保険（社保）」という言葉を耳にすることがあります。
しかし、在留外国人の方からは、
「自分はどちらに入っているのか分からない」「何が違うのかイメージしにくい」
という声もよく聞かれます。
このページでは、在留外国人向けに、
日本の公的医療保険の種類をやさしい日本語で整理します。
細かい法律の話ではなく、
国民健康保険と社会保険の違いをざっくり理解することを目的にしています。
1. 日本の公的医療保険は大きく2つのグループ
日本の公的医療保険は、ざっくり分けると次の2つのグループがあります。
- 国民健康保険：市区町村が運営する保険
- 社会保険の健康保険：会社員などが入る「会社の健康保険」
どちらも、
病院やクリニックを受診するときに医療費の多くをカバーしてくれるという意味では同じですが、
加入する人の立場や、保険料の決まり方、手続きの窓口が少し違います。
2. 国民健康保険（国保）の基本
2-1. 国民健康保険に入りやすい人
国民健康保険は、
原則として次のような人が加入することが多い公的医療保険です。
- 自営業・フリーランスで働いている人
- 会社を辞めて、次の仕事が決まっていない人
- 留学生などで、会社の健康保険に入っていない人
- パート・アルバイトで働いているが、条件を満たさず社会保険に入っていない人
在留外国人も、日本に住民登録をしている場合は、
条件に応じて国民健康保険の加入対象になることがあります。
2-2. 加入手続きと窓口
国民健康保険の手続きは、
原則として住んでいる市区町村の役所が窓口です。
例えば、
- 日本に来て住民登録をしたとき
- 会社を退職して、会社の健康保険をやめたとき
などに、役所で国民健康保険の加入手続きを行うことが多くなります。
2-3. 保険料の決まり方（イメージ）
国民健康保険の保険料は、
- 前の年の所得
- 世帯の人数
などをもとにして、市区町村ごとに計算されます。
そのため、住んでいる地域や収入によって金額が変わります。
実際にいくらになるかは、
住んでいる市区町村から届く通知や、役所の窓口で確認する必要があります。
3. 社会保険の健康保険（会社の健康保険）の基本
3-1. 社会保険に入りやすい人
社会保険の健康保険は、
主に次のような人が加入することが多い制度です。
- 正社員・契約社員・派遣社員などの会社員
- 一定時間以上働いているパート・アルバイト
在留外国人であっても、
日本の会社に雇用されて働く場合は、
条件を満たせば日本人と同じように社会保険の対象になります。
3-2. 加入手続きと保険料
社会保険に加入する場合、
加入の手続きは会社がまとめて行うのが一般的です。
保険料は、
- 給料の金額に応じて決まる
- 会社と本人がおおよそ半分ずつ負担する
という仕組みになっています。
毎月の給料から、
健康保険料や年金保険料などが自動的に差し引かれており、
会社がまとめて納めています。
3-3. 国民健康保険との違い（イメージ）
国民健康保険と社会保険の健康保険は、
「病気やケガのときに医療費をカバーする」という意味では同じですが、
- 加入窓口（役所か会社か）
- 保険料の計算方法
- 会社が一部負担してくれるかどうか
といった点が異なります。
4. 自分がどの保険に入っているか確認する方法
4-1. 保険証をチェックする
まずは、手元の健康保険証を確認してみましょう。
- 市区町村の名前が書かれている → 国民健康保険であることが多い
- 会社名や健康保険組合の名前が書かれている → 社会保険（会社の健康保険）であることが多い
保険証には、保険者（運営する側）の名称が書かれています。
そこを見ることで、国保か社保かを判断しやすくなります。
4-2. 分からないときは相談する
保険証を見てもよく分からない場合は、
- 会社員の場合：会社の人事・総務などの担当者
- 自営業・留学生などの場合：住んでいる市区町村の役所
に相談することで、
自分がどの保険に加入しているかを確認できます。
5. 立場ごとのよくあるパターン
ここでは、在留外国人に多い立場ごとに、
「どの保険になりやすいか」の一般的なイメージを整理します。
5-1. 留学生の場合
留学生として日本に長期滞在する場合、
多くは国民健康保険に加入することになります。
在留期間や在学状況によって扱いが変わることもあるため、
実際には、学校の事務・自治体の窓口の案内を必ず確認してください。
5-2. 正社員・契約社員・派遣社員の場合
日本の会社に雇用されてフルタイムで働く場合、
多くは社会保険の健康保険に加入します。
入社時の書類や説明のなかで、
健康保険・年金の案内がされることが多いので、
説明資料や加入通知は大切に保管しておきましょう。
5-3. パート・アルバイトの場合
パート・アルバイトの場合は、
働く時間や収入の額によって、
- 国民健康保険に加入するケース
- 条件を満たして社会保険に加入するケース
の両方があります。
境目の条件は少し複雑なので、
実際には「勤務先の説明」や「自治体の案内」で確認することが重要です。
5-4. 自営業・フリーランスの場合
自分で仕事をしている場合、
多くは国民健康保険に加入します。
会社を通さずに働いているため、
健康保険の手続きは、自分で住んでいる市区町村の役所に行って行う必要があります。
6. よくある質問（Q&A）
Q1. 国保と社保は、どちらが「得」ですか？
国保と社保は、保険料の計算方法や、会社が一部負担してくれるかどうかなど、仕組みが異なります。
どちらが「得」かは、収入や家族構成、働き方によって変わるため、一概には言えません。
自分の状況に合った制度かどうかを確認するためには、会社や自治体の窓口で説明を聞くことが大切です。
Q2. 転職や退職をしたとき、保険はどうなりますか？
会社を退職すると、会社の健康保険（社会保険）からは基本的に外れることになります。
その後は、一定の条件のもとで任意継続するか、住んでいる市区町村の国民健康保険に加入するかなどを選ぶことになります。
実際にどの選択肢があるかは、会社や自治体の窓口で必ず確認してください。
Q3. 家族も同じ健康保険に入ることができますか？
社会保険の健康保険では、一定の条件を満たす配偶者や子どもなどを「扶養家族」として加入させる仕組みがあります。
国民健康保険の場合は、原則として世帯単位で加入し、世帯の中の全員が対象になるイメージです。
具体的な条件や保険料の扱いは制度によって異なるため、加入している保険の窓口で確認することが必要です。
Q4. 自分の状況で、どの保険に入るべきか分かりません。
在留資格・働き方・収入・家族構成などによって、最適な選択肢は変わってきます。
一人で判断するのが難しいと感じた場合は、
まず勤務先の担当者（人事・総務など）や、お住まいの市区町村の窓口に相談してみてください。
外国人向けの相談窓口を用意している自治体もあります。
7. まとめ：自分の立場と保険の関係をつかんでおく
- 日本の公的医療保険は、大きく「国民健康保険」と「社会保険の健康保険」に分けられます。
- 国民健康保険は、自営業・留学生・無職など、会社の健康保険に入っていない人が加入することが多い制度です。
- 社会保険の健康保険は、会社員や一定条件を満たすパート・アルバイトなどが加入する制度で、保険料は会社と本人が一緒に負担します。
- 自分がどの保険に入っているかは、健康保険証の記載や、会社・自治体の窓口で確認することができます。
- 在留外国人にとっても、病気やケガのときに安心して医療を受けるために、自分と健康保険の関係を知っておくことが大切です。
このページを読んだあと、
ぜひ一度、自分の健康保険証を確認してみてください。
「国保か社保か」「どこが保険者になっているのか」が分かるだけでも、
日本の医療と保険のしくみが少し身近に感じられるはずです。
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