日本で勉強や仕事をしていると、
心の不調や強いストレスを感じることがあります。
そのとき、「学校や職場に話してもよいのか」「どう伝えたらいいのか分からない」と感じ、
一人で抱え込んでしまう在留外国人も少なくありません。
このページでは、
学校・職場でメンタルヘルスの悩みを相談するときのポイントを、
在留外国人向けにやさしい日本語で整理します。
「どこまで話すか」「誰に話すか」は自分で選んでよい、という前提で考えていきます。
1. 学校・職場に相談するメリットと、よくある不安
1-1. 相談することで得られるかもしれない支援
学校や職場にメンタルヘルスの悩みを伝えることで、
次のようなサポートにつながる可能性があります。
- 授業・課題・試験のスケジュール調整(学生の場合)
- 一時的な勤務時間や業務内容の調整(社会人の場合)
- カウンセリングや医療機関の紹介
- 相談できる窓口・制度の情報提供
もちろん、すべての学校・職場で同じ対応ができるわけではありませんが、
「状況を理解してもらうこと」だけでも負担が軽くなることがあります。
1-2. よくある不安
一方で、相談する前には次のような不安も生まれやすいです。
- 「弱い人だと思われるのではないか」
- 「成績や評価に悪い影響が出るのではないか」
- 「日本語でうまく伝えられない」
- 「どこまで話していいか分からない」
こうした不安を完全になくすことは難しいですが、
「何を伝えるかを自分で選ぶ」「一度に全部話さなくてよい」と考えると、少しラクになることがあります。
2. 相談する前に準備しておくとよいこと
2-1. 自分の状態を簡単にまとめる
相談の前に、紙やスマートフォンのメモに、次のような項目を書き出してみましょう。
- いつごろから、どんなことでつらいか
- 勉強や仕事にどのような影響が出ているか
- 眠り・食事・体調の変化があるか
- 相談したいこと(例:「少しスケジュールの調整を相談したい」など)
日本語でなくてもかまいません。
自分の言葉でまとめておき、必要に応じて翻訳アプリを使えば大丈夫です。
2-2. 「今日の相談のゴール」を決めておく
一度の相談ですべてを解決する必要はありません。
まずは、「今日のゴール」を1つか2つに決めておくと話しやすくなります。
- 「今の状況を知っておいてほしい」
- 「学校/仕事の負担を少し減らす方法を相談したい」
- 「医療機関や相談窓口を紹介してほしい」
ゴールを決めておくことで、
話がそれても元に戻しやすくなります。
3. 学校で相談するときのポイント(学生の場合)
3-1. 相談しやすい窓口の例
学校には、次のような相談先があることが多いです。
- 学生相談室・カウンセリングルーム
- 担任の先生・指導教員
- 留学生担当窓口・国際センター
- 学生課・教務課などの事務窓口
まずは、「どこに相談したらよいか」を
留学生担当や事務窓口で聞いてみることから始めても構いません。
3-2. 初めて相談するときの言い方のイメージ
日本語が得意でなくても、
短いフレーズで十分に相談のきっかけをつくることができます。
- 「最近、心のことで少しつらいです。相談できる人はいますか。」
- 「授業や勉強のことでストレスが強いので、話を聞いてほしいです。」
- 「どこに相談したらいいか分からないので、教えてください。」
詳しい状況は、
相談室やカウンセラーと少しずつ話していけば大丈夫です。
3-3. 授業や課題の調整を相談したいとき
心の不調により、
- 授業に出るのが難しい
- 課題の提出が間に合わない
- 集中が続かない
などの影響が出ている場合は、
次のような形で相談してみることができます。
- 「メンタルヘルスのことで、授業についていくのが難しいです。」
- 「課題の締め切りを少し延ばしてもらえる可能性はありますか。」
- 「出席や成績について、相談できる先生はいますか。」
学校によって対応は異なりますが、
状況を伝えないと配慮しようがない、という面もあります。
できる範囲で、「今困っていること」を具体的に伝えてみてください。
4. 職場で相談するときのポイント(社会人の場合)
4-1. 相談先のイメージ
会社や職場では、次のような人・窓口が相談先になることがあります。
- 直属の上司
- 人事・総務・労務担当
- 産業医・社内の健康相談窓口
- 社外カウンセリングサービス(福利厚生の一部として用意されている場合)
就業規則や社内ポータル、
入社時の案内資料に、健康相談やメンタルヘルスに関する情報がないか確認してみてください。
4-2. 上司や人事に話すときのポイント
職場で話すときは、「気持ち」だけでなく、
仕事への影響も合わせて伝えると理解してもらいやすくなります。
例:
- 「最近、メンタル面でつらく、集中が続かないことが増えています。」
- 「睡眠の問題があり、朝のパフォーマンスが下がっています。」
- 「一時的に業務量を少し調整できないか相談したいです。」
詳細をどこまで話すかは、自分で決めて構いません。
「病名」ではなく、「仕事にどんな影響が出ているか」を中心に説明するイメージでも大丈夫です。
4-3. 調整をお願いするときの考え方
調整をお願いするときは、
会社の事情もあるため、必ず希望どおりになるとは限りませんが、
次のような内容を相談してみることができます。
- 一時的に残業を減らせないか
- 可能であれば在宅勤務や時差出勤を増やせないか
- 負担の大きい業務を一時的に他の業務に変えられないか
相談は、「要求」ではなく一緒に考えてもらうための提案というイメージで伝えると、話しやすくなることがあります。
5. 日本語が不安な場合の伝え方の工夫
5-1. 事前に文章を準備する
相談の前に、自分の母語や英語で文章を作り、
翻訳アプリで日本語にしておく方法があります。
たとえば、次のような構成で書いてみると整理しやすいです。
- 自分が置かれている状況(留学生・社員など)
- いつごろから、どんな症状やストレスがあるか
- 勉強・仕事への影響
- 相談したいこと・お願いしたいこと
完璧な日本語でなくても問題ありません。
メモを見せながら説明することで、相手も内容を理解しやすくなります。
5-2. 短い決まり文句を用意する
すべてを日本語で話そうとすると、プレッシャーが大きくなります。
まずは、次のような短いフレーズだけでも覚えておくとよいでしょう。
- 「メンタルヘルスのことで、少し相談したいです。」
- 「最近、心のことでつらくて、勉強(仕事)に影響が出ています。」
- 「詳しくはメモに書いてきました。」
こうしたフレーズから話を始めれば、
相手も「ゆっくり聞こう」という姿勢になりやすくなります。
6. プライバシーと「どこまで話すか」の考え方
メンタルヘルスの話は、個人的でデリケートなテーマです。
すべてを詳しく話さなければいけないわけではありません。
6-1. 自分で境界線を決めてよい
たとえば、次のような考え方があります。
- 病名は言わず、「心の不調」や「メンタルヘルスの問題」とだけ伝える
- 家庭の事情など、話したくない部分は無理に説明しない
- 「詳しい内容は医師やカウンセラーと話しています」と伝える
学校や職場に共有する必要があるのは、
「今の状態」と「どんな配慮や調整があると助かるか」の部分です。
6-2. 情報の共有範囲を確認する
相談の際には、
- 誰がこの情報を知るのか(上司だけか、人事にも共有されるのか)
- 記録はどのように扱われるのか
などを質問しても構いません。
プライバシーへの配慮は、多くの学校・職場で重視されています。
7. よくある質問(Q&A)
Q1. 相談したことで、成績や評価が下がるのではないかと心配です。
その心配はとても自然なものです。
実際には、早めに相談することで、
無断欠席やパフォーマンスの低下を防ぐことにつながり、
結果として評価や成績が守られることもあります。
どうしても不安な場合は、「評価にどう影響しますか」と率直に聞いてみてもよいでしょう。
Q2. 日本語が不十分で、誤解されてしまうのがこわいです。
誤解の不安がある場合は、
メモや翻訳アプリ、信頼できる日本語話者のサポートを使うことで減らすことができます。
また、「日本語があまり得意ではないので、ゆっくり聞いてもらえると助かります」と最初に伝えることも大切です。
Q3. 一度相談したのに、あまり変化がなく、がっかりしてしまいました。
一度の相談で環境が大きく変わらないこともあります。
その場合でも、「話せる相手がいる」「状況を知っている人がいる」こと自体に意味があります。
可能であれば、別の担当者・別の窓口・外部の相談機関など、
複数の選択肢を組み合わせることも検討してみてください。
Q4. どれくらいつらくなったら、学校や職場に相談したほうがよいですか。
明確なラインがあるわけではありませんが、
「勉強や仕事に支障が出ている」「数週間以上つらい状態が続いている」と感じたら、
相談を検討するタイミングと考えてよいでしょう。
迷う場合は、「まだ早いかもしれないけれど」と前置きして相談してもかまいません。
8. まとめ:一人で抱え込まず、「学校・職場」と一緒に考える
- 学校や職場にメンタルヘルスの悩みを伝えることで、授業・課題・勤務・業務の調整や、相談窓口・医療機関の紹介などの支援が得られることがあります。
- 相談の前に、自分の状態と「今日のゴール」をメモにまとめておくと、話しやすくなります。
- 学生は、学生相談室や担任・留学生担当、社会人は上司・人事・産業医など、立場に応じた窓口を活用できます。
- 日本語が不安な場合は、短いフレーズ・事前の文章・翻訳アプリ・日本語話者のサポートを組み合わせることができます。
- プライバシーを守りながら、「今の状態」と「必要な配慮」を中心に伝えるだけでも、一人で抱え込まない一歩になります。
このページを読み終えたあと、
「もし誰か一人にだけ話すとしたら、誰に・何から話すか」を考えてみてください。
そのイメージをメモしておくだけでも、
実際に相談するときのハードルは少し下がります。


コメント